医薬業界が見据える「中分子医薬品」の未来

世界の医薬品業界で主導権を握って久しいのが「抗体医薬品」。がん治療分野では、抗体医薬品の免疫チェックポイント阻害剤が存在感を一段と高めている。この分野では、小野薬品工業(4528)と米ブリストルマイヤーズ スクイブ社の「オプジーボ」に続き、米メルク社の「キイトルーダ」、中外製薬(4519)とスイスのロシュ社グループの「テセントリク」が激しい市場シェア争いを続けている。他の疾患分野でも抗体医薬品の開発競争は熾烈を極めており、世界の医薬品売上高の上位は抗体医薬品が独占しつつある状況だ。

 抗体医薬品はアミノ酸が多数繋がったタンパク質だが、薬として欠点も多く指摘されている。最大の難点は分子量が大きいため、製造コストが高くなることだ。また、分子量が大きいことで脳組織などへの薬剤の運搬と言う面では課題もある。タンパク質は体内で比較的分解されやすく、これも医薬品としての大きな欠陥となっている。

■ 期待が高まる「中分子医薬品」とは

 こうした課題を克服できる物質として、期待され始めているのがペプチド医薬品や核酸医薬品などだ。これらの物質は高分子の抗体医薬品と従来の低分子医薬品との中間の分子量を持っていて「中分子医薬品」とも呼ばれる。

 ペプチドはタンパク質と同様にアミノ酸が連なった構造を持つが、アミノ酸数は比較的少ない。実はペプチド医薬品はすでに開発が一巡したとの見方もあった。がんワクチン分野では期待されたような治験結果が得られず、開発を断念する企業が相次いでいたからだ。しかし、新たな技術導入で復活の可能性も高まっている。

 中分子医薬品では、タンパク質の合成を制御しようという核酸医薬品も注目を集める。これらの中分子医薬品は、高分子の抗体医薬品に比べて生産コストや体内通過性に優れるというメリットがあり、ポスト「抗体医薬品」として注目されている。

 塩野義製薬(4507)や中外製薬(4519)などは、医薬品分野でペプチドを新薬開発カテゴリーの一つに位置づけている。これまでのペプチド医薬品は天然型ペプチドを対象としていた。天然型は20種類のアミノ酸の組み合わせで構成されており、ペプチド医薬品を実現する可能性は限定的だった。しかし、特殊アミノ酸を組み込んだ特殊ペプチドを作成することで、ペプチドによる新薬開発の可能性を高めようというアイディアが浮上している。

 この特殊ペプチドの創薬開発をサポートするのが、バイオベンチャー企業のペプチドリーム(4587)だ。特殊ペプチドにも創薬における課題はあり、製造する際に化学的にアミノ酸をつなぐのに莫大な手間とコストがかかるため、実用性には難があるとの指摘もされる。そこでぺプチドリームは特殊ペプチド原薬の研究開発・生産を担当するペプチスター社を立ち上げて一貫したフォロー態勢を目指している。

 ペプチドリームで少し気がかりなのは、創業者の一人であった菅裕明氏(東京大学大学院理学系研究科教授)が同社の社外取締役を退任すると発表したこと。菅氏はペプチドリームの基幹技術である「特殊ペプチドを使った創薬プラットフォーム」をゼロから開発した人物。会社側は他のベンチャー企業との「利益相反に準じる関係が生じてしまう懸念が指摘された」ことを理由とするが、技術の中核人材が抜けた穴は小さくないだろう。

 もちろん、同社は開発面を担当する取締役開発部長の舛屋圭一氏や海外の提携を取り仕切るパトリック・リード社長など、ほかにも人材をそろえているものの、今後のペプチドの開発進捗とともに同社の動向を見ておきたい点だ。

■ 「核酸医薬品」も多くの日本企業が開発中だ

 もう一つの中分子医薬品である核酸医薬品分野はどうだろうか。同分野の開発で世界的に先行したのは米ファイザー社である。同社は加齢黄斑変性症治療薬「マクジェン」を開発し、同薬は2008年に国内でも上市された。米国では高コレステロール血症治療薬なども登場したものの、国内の開発は停滞していた。

 しかし、ここにきて国内メーカーも、日本新薬(4516)や第一三共(4568)、協和発酵キリン(4151)、田辺三菱製薬(4508)などが新薬開発を急ピッチで進めている。バイオベンチャー企業では東大初の創薬ベンチャーであるリボミック(4591)の開発に期待がかかる。抗体医薬品分野では大きく出遅れたわが国だが、中分子医薬品分野での巻き返しができるかが、今後のグローバルな開発競争の中で注目される。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

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